※鈴村さん視点で書きました。敬称略。キャラの違いとかはマジ勘弁
朝日がまぶしい時間帯であった。朝日がさす窓からかすかに春の兆しが見えた。ドアのそばから声が聞こえる。
「けんちゃ~ん。今日は忙しくなるからね」
真綾の声だった。なんとなく照れくさくなった。もう結婚して何か月もたったのにいまだに真綾の声を聞いただけで顔を真っ赤にすることがある。彼女は子どものように無垢でありながらこだわり強い。一緒にいると自然に笑顔になれる。そんな彼女に俺は惚れてしまった。
「は~い。夕飯はどうすんの~?」
「う~ん…たぶん今日はいらないよー」
「わかった~ほんなら気を付けて行ってきいや~」
あわただしく階段を下りる音が聞こえた。
「あ、そうだ!」
「どないしたん?」
真綾は俺にキスをしながら笑顔で言った。
「忘れもの。行ってきます」
しまったな。顔がにやけていてうまく「いってらっしゃい」が言えなかった。
今日俺は珍しく休みだった。といってもやることがなかった。真綾が帰るまで何か…何か。カレンダーがふと目に止まった。「あ、バレンタインデー」とつぶやいた。今日はバレンタインデーだ。
(そうやな~逆チョコってのも面白いかもしれんな。真綾帰ってくるまで作ってみよか)と名案を思いついた。
太陽もすっかり高くなってちょうど頭の上に来ていた。それでもこの季節はまだまだ寒い。ぶるぶると震えながらも材料を買いに行く。
作ろうとは思ってみたものの、いざやろうとすると足が重いような、急に羽が生えて軽くなるような不思議な感覚になる。
(手作りチョコを渡す乙女は毎年こんな感覚になるんかな?そう思ったら乙女も大変やな~)
不思議な体験をしているのも束の間、必要な材料を買って家に帰った。
「さて、がんばりますか!」気持ちを切り替えた。
しかし、なかなか完成しない。それどころか失敗の連続だった。
「えっと…これでいいんかな?あ、分量間違えた!うわ~なんかどろどろや~…あれ?なんか焦げたにおいが!あ~どないしたらええんや~」
なんだかんだで完成した…が形がお世辞にもおいしそうとは言えない。でもまあ味のほうはギリギリ合格だ。
(喜んでくれるやろか?)
「ただいま~あ~つかれた~」真綾が帰ってきた。いつもは深夜に帰ってくるのに今日は珍しく早かった。
「おかえり。今日は早かったんやね」
「うん。今日はみんな予定があったから打ち上げはなかったんだー」
「そうなんや?そんな日もあるんやなー」
よし。いい流れ。このまま渡して…
「あ~そうだ!今日バレンタインじゃん!いいものあげる!」
「へ?ああうん!ありがとう!楽しみやな~」
しまった。先手を打たれてしまった。
「はい。チョコレート。けっこう高かったんだ」
「おお!すごい!これデパートとかで売ってて…高いやつやん!」
「けんちゃん興奮しすぎ~ねえねえ一緒に食べよう?」
「そうしよ!」
(あ…こんな高級なチョコと…俺のチョコ…比べたら…そりゃな。こんな汚いもの並べるより…こっち食べたほうがええよな。)
「あ、ちょっと紅茶入れてくるわー」
なんかなー振られた気分や。
「あれ?けんちゃんこれなに?何か作ってたの?」
「!?あ…それは…」
「あ、この赤い箱からチョコレートのいいにおいがする~」
(真綾!頼むからそれ開けんといてくれ!)心臓が口から飛び出そうになった。むしろ飛んでどこかへ行ってしまったのだろうか
「あ、チョコじゃん!もしかしてけんちゃんの手作り!?」
(見られてもうた…正直に話すか)
「うん。真綾今日も忙しいから…疲れが出ないようにチョコ作ってん。でも形は不細工やし…そんな高級なちょこと並べてもうたらそっちのほうが…」
「うんわかった。」
「へ?」
真綾は自分が買ってきたチョコを戸棚にしまった。
「一緒に食べよ」
「真綾…」
真綾は俺をぎゅっと抱きしめた。
「そんな顔しないの。自分を愛してくれている人のチョコ食べないなんておかしいじゃん。それに形が汚くても味が悪くても作ってくれた人の気持ちが大切だもん。ちょっと変な形すぎるかも。でもうれしかった。」「真綾…俺こそありがとう!」
「じゃあ一緒に食べましょうか!」
「そうしよ!そうしよ!」
「あ、そうだ!」
そういうと、真綾は俺にキスをした。
「忘れもの。早く食べましょ」
「もう!ええ加減忘れ物したらあかんで!」
二人で一緒に笑った。
~完~


